今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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Midnight Zoo #34

 晴香はベッドサイドに立っている半透明なもうひとりの自分をぼんやりと見上げていた。
ーおかえり。
 丁度もうひとりの自分が晴香自身に戻ろうとしたときだった。
 晴香の一言がふたりの間にほんの少しの時間を作った。
ー素直に受け取っていいのかなぁ。
ーさぁ、どうでしょうねぇ。
 その返答に半透明な晴香がくすりと笑った。
 そして、ベッドの中の晴香もそのちっちゃな笑いにつられて口元が緩んだ。
ーまた航さんとこ?
ー見てたんでしょ?
ー見てたんじゃなくて、見えてたのよ。でも、いいね、気軽に話せるようになって。そうやってどこにでも行けるってうらやましいわ。
 また半透明の晴香はくすりと笑った。ただ今度の笑いは何かを思い出しているようだった。
ーあなたが寝入ってから朝までって制限あるんだけど。正確には日の出か、またはあなたの目覚めまで、ね。
ーそうね。おかげさまでわたしは夢を見ない夜がなくなったわ。
 半透明な晴香は、目の前で半分眠っているはずの晴香の中に戻るのを少しためらった。
ー何が言いたいの?わたしを無くす方法が見つかったの?
ーあなたこそわたしの身体を独り占めしたかったんじゃないの?
 半透明な晴香は首を横に振りながら、そっとベッドの中の晴香に戻っていった。

 朝日が寝室のカーテンの色を外から明るくし始めている。その色をぼんやり見つめながら晴香はベッドから起き出し、ほんの今までここにも立っていたはずの自分と立ち位置を重ねてみた。
 その場所から改めてまだ自分の体温が残っているベッドを見下ろし、肩越しに朝日の気配を感じる。わたしのこの肉体を、昼間のわたしの時間までも自分のものにしようとしていたもうひとりの自分の雰囲気が変わってきたのを何となく感じた。
 以前のように挑戦的でもなく、また強気に昼間の晴香を否定していた最近までのもう1人の自分とは、印象が変わっている。現実の肉体はどうあがいてもひと つしかなく、虎視眈々とこの肉体を狙っていたはずなのに。肉体ごともうひとりの晴香が主導権を握って、昼間の、そうすべての晴香という時間とそれに関わる すべてのものを自分ひとりのものにしようとしていた。
「何が彼女をそうさせたんだろう」
 晴香はすでに答えがわかっている質問をあえて口にしてみた。口にすることでもうひとりの自分を理解しているのだと、少しでも自分に言い聞かせるがために。
ー元はこのわたしなんだから、同じ人に好意を抱くのは自然の流れなんだろうな。
 中途半端かも知れないが、今のまま昼と夜の別々の晴香が存在する方が幸せなんじゃないかと最近考えるようになってきていた。
ーきっともうひとりのわたしも同じように思い始めているじゃないかな。それに、、、
 せっかく仲よくなった桜子の彼氏を奪えてもまた自分はひとりになってしまう、桜子とひなのとの楽しい時間を思い出すと、航がそばに来てくれてもそれだけだと辛すぎると。

 目覚めの珈琲を入れて、部屋中に珈琲の香りを満たしながら、晴香は思っていた。
ーもうひとりの晴香を通せば桜子を失わず、航との時間を共有できるんだもの。
 それもいいのではないかと。

(続く)
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by hello_ken1 | 2010-01-17 10:31 | Midnight Zoo
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