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B.O.D.Y. #17ー意識だけの涼子は体を自分以外の者に使われるのを拒んでいる。そして体を持つ涼子はもうひとつの意識にこの体を支配されるのを拒んでいる。ふたりは拒みあっている。結局、意識だけの涼子が体を滅ぼそうとしている。 祐二は抱きしめながら意識だけの涼子の抵抗を切り捨てることへの躊躇を覚えた。 ー彼女は正しいかもしれない。自分の意志で入れ替わりを希望し、そして再びそれを取りやめる。でも対象になった今の涼子はどうなる。つかの間の違う世界を経験しただけか。そして望みもしないのに消滅する恐怖を味わうことになる。知らないなら知らないですむ消滅する恐怖。この涼子はふたりともその恐怖を味わうことになる。 ー祐二、お前は誰を救おうとしているのか、どの涼子を救おうとしているのか、二人の涼子か、それとも以前の涼子を救えなかった自分を救おうとしているだけじゃないのか、自分自身のためだけじゃないのか。 意識だけの涼子の気持ちが理解できたように思えるにつれ、祐二は悩んだ。 「わたし、水にも戻れない」 「どうして水に戻るんだい」 「それを涼子が求めている。この体を彼女が欲しがってる。水がもともとのわたしなの。そのくらい覚えているわ」 「ぼくにはミーだったときの記憶がないんだ」 「上手に入替わったのね」 「祐二が最後まで希望したみたいだからね」 「わたしたち涼子はだめだったみたい」 「救えないかな、救いたいんだ」 「わたし自身だった水がもうなくなっちゃってるから、ふたりとも元には戻れないのよ」 「共存は」 「うまくいくはずないもの。誰でも自分の体は一人で使いたいものよ」 水のように透明度を増す涼子、でも、床に吸い込まれることはない。 どこまで透明度をますのだろう。 どこまで姿を残すのだろう。 祐二の胸から離れ、壁に背もたれる涼子。 恐がっているのか、喜んでいるのか。 泣いているのか、微笑んでいるのか。 祐二が手を差し伸べると、透明な涼子はゆっくりとした動きでその手を拒んだ。 ただ、うれしそうな目元で。 それだけははっきりと祐二にもわかった。 ーありがとう。 二人の涼子の声が祐二の耳にこだました。 ー涼子はうれしいよ、祐二。こんなになっても祐二は優しいんだもの。 祐二は首を横に振る、唇をかみしめながら首を振る。 どのくらい時間は経ったのだろうか。 オレンジ色の陽射しが部屋中にあふれ、優しく涼子を包んでいる。 祐二はそのまま、透明になっていく涼子を見つめつづけた。 完
by hello_ken1
| 2005-12-24 01:24
| B.O.D.Y.
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