カフェにひとりでいるのは好きだ。それも平日の昼間、ランチタイムの後、学生たちの下校の前。
カフェから外を眺めるのがいい。オープンテラスだとテーブルが低すぎて、文章が書けない。だから、窓沿いのカウンターが好きだ。
どうしてそのひとにこんな話をしたのか、思い出せない。
ふと話題が途切れ、そのひとと目が合い、すべての音がぼくらの周りから消えた。そう思えたとき、ぼくはそのひとにカフェの話をしていた。人気(ひとけ)のないカフェでは、懐かしいフェアグランドアトラクションが流れ出した。
「うちの娘と気が合うかもね」
そのひとのその言葉に、ぼくは娘の顔を思い出しながら、曖昧な作り笑顔で、そのひとから視線をそらした。