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黄緑色の手の女の子 #8「ねぇ、おかあさん、わたし、観覧車に乗りたい」 女の子は、自分の左手をつかんでいる母親に向かってそう言った。 「展望台に行くと、すっごくすてきなものが見えるよ」 女の子の右手をつかんでいる父親がそう答え、母親は頷きながら微笑んでいた。 観覧車に未練が残りつつも、父親にそう言われ、母親に微笑まれると、女の子も少しばかり展望台に期待をもった。 そこから十分、観覧車からだと二十分の距離のところに展望台の頂上はあった。 父親は言った。 「右手の向こうの方に見えるのが、お父さんの育った街だ。どうだ、緑が生い茂っていて綺麗だろう」 父親はひどく自慢げだった。 「そして、左手の方に見えるのが、お母さんの故郷だ。大きな河が町中を豊かにしている」 父親は母親と顔を見合わせながら、頷きあっていた。 女の子は確かに綺麗な街並みだと思ったが、それ以上の感情は抱けなかった。今、この女の子の好奇心の対象となっているのは、やはり観覧車だった。女の子はどうしても観覧車に乗りたかった。その気持ちを伝えようと母親の顔を見上げたが、母親もまた、父親と同様に自分らの故郷の光景に浸っていた。 「おかあさん、、、」 女の子がもう一度自分の気持ちを母親に伝えようとしたとき、遊園地の閉園のアナウンスが無情にも園内にこだました。 「本日のご来園ありがとうございました。そろそろ閉園の時間と、、、」 そのアナウンスを耳にすると、女の子はいても立ってもいられなくなり右手の父親と左手の母親を振り解き、展望台の元来た道の先にある、展覧車に向かって走りだした。 ー観覧車に乗るんだぁ。 (続く)
by hello_ken1
| 2006-05-14 04:03
| 黄緑色の手の女の子
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