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そのひとの娘と空港でーいつでもどこでもってわけにはいかないけどさ。だけど、きみのことをまず思うんだろうな。 成田発ではない。羽田から関空経由の飛行機がぼくの乗る便だった。 見送りはいらないから、と伝えていた。 そう伝えていたけれど、それ自体も言う事はなかったのかも知れない。 それを便名まで伝えた時点で、ぼくは彼女たちにもう一度会いたいと言ったことになる。 「何便なの?」 「関空を深夜だよ」 「だから便名は?」 見送りには行かないと言っていたそのひとの娘が、ぼくよりも先に羽田空港に来ていた。 「わたしたちはもう別れているんだからね」 「そうなんだ」 「そうだよ。あのときからずっとね。だから飛行機が飛び立った後はますますふたりとも自由なんだから」 あのときって、唐突に今日の日の話をしたときのことなんだろうな、と思った。 優しい気遣い、かなり甘酸っぱい、それがそのひとの娘が一晩考えた台詞。 「でも、約束だけは守るんだよ。そのくらいは守ってよ」 「落ち着いたら、連絡するって約束、だね」 「うん、ありがとう、覚えてるんだ」 羽田でのフライトまでにはまだ時間があったけど、そのひとの娘にはそんな時間なんて関係なかったんだと思う。 フライト時間ぎりぎりまで一緒にいれるほど気丈じゃないのよ、わたしは。そのひとの娘の目がそう物語っていた。 「飛行機の中で読んでよ。わたしとママのふたりの思いがそれぞれ書かれてるから」 「着いてからじゃないんだね」 「着くまで我慢できないでしょ」 そのひとの娘は軽くぼくの唇にキスをし、封筒をぼくのジャケットのポケットに無造作に突っ込んだ。 「これ以上のキスは、そのさきまで行きたくなるから」 行き場のない言葉を口にするそのひとの娘の少しよれた笑顔が、ぼくの胸を余計に締めつけた。 「いつでもどこでもってわけには、」 ぼくの続きの思いは、さっき以上のキスではげしく被われた。
by hello_ken1
| 2006-07-29 13:00
| そのひと
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