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行ってきます「魔除けじゃないじゃん」 「いいのよ、除けなくても。結果的に運が開ければ」 「だから開運の御守り? 」 きみが買ってきた開運シールが手渡される。 「でも御守りってお札になってたり、金刺繍の布袋だったりしないか?」 あきれた仕草で首を横に振るきみ。 「そんなの無くすでしょう。シールだったらさ、携帯の裏っかわにでも貼っとけば無くさないし」 携帯を渡しなさいと右手を差し出すきみの手は、指は、細くて美しい。いい指の形をしているね。 「それに携帯使うたびに気になるでしょ。気になるってことが大事なのよ」 差し出されたぼくの携帯のどこにそのシールを貼ろうか、きみは思案のしどころって感じの表情をする。 「魔除けも開運も、何事も気持ちが大事なのっ」 今、空港でアイスキャラメルマキアートを飲んでいます。 チェックインカウンターでは「おめでとうございます」と言われたよ。 何でも今日、100人めのチェックインがぼくらしい。記念の携帯ストラップが手渡されたんだ。 これも開運かな、 では行ってきますね。留守番よろしく。 ぼくとしては長めのメール、きみにとってはきっと見当違いのメールかも。 「ほんとに行くんだ」 昨日の夜は、ぼくのマンションより空港に近いきみの部屋に泊まった。 「約束したしね」 「存在しない約束?」 きみは少しうつむき加減に小さい声で言った。 「そうかも知れないね。台風が好きだった彼女との約束。でも確かにぼくは会話もしたし」 「会話じゃなくて、話を聞いた」 ぼくの胸に顔をうずめるきみ。 「もっと言うと声を聞いた、うぅん、声の気配を感じただけかも知れないじゃない」 「そうかも知れないね。きみは正しくて、きっとそうなんだろうね」 −頭では、理屈ではわかっているつもりだよ。 「でもね」と、ぼく。 「うん、でもね」と、きみ。 最終案内を告げるアナウンスが空港のロビーに響く。 −もう行かなくっちゃ。 「メール送信!」 きみへの想いを込めて、送信ボタンをぐっと押す。 −ちゃんと戻ってくるからさ。 きみがぼくの携帯に貼った開運シールに向かって、ぼくはきみへのひとことを口にする。 「心配いらないから」 朝、寝息を立てていたきみもそろそろ目を覚ます頃だろう。 夕べ、ぼくとペアの開運シールを貼ったきみの携帯へ、メールと一緒にぼくの想いも届きますように。
by hello_ken1
| 2005-08-06 01:27
| EndlessGoodTime
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