人気ブログランキング | 話題のタグを見る

今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31


行ってきます




lucky charm, originally uploaded by hello.ken1.

「魔除けじゃないじゃん」
「いいのよ、除けなくても。結果的に運が開ければ」
「だから開運の御守り? 」
きみが買ってきた開運シールが手渡される。
「でも御守りってお札になってたり、金刺繍の布袋だったりしないか?」
あきれた仕草で首を横に振るきみ。
「そんなの無くすでしょう。シールだったらさ、携帯の裏っかわにでも貼っとけば無くさないし」
携帯を渡しなさいと右手を差し出すきみの手は、指は、細くて美しい。いい指の形をしているね。
「それに携帯使うたびに気になるでしょ。気になるってことが大事なのよ」
差し出されたぼくの携帯のどこにそのシールを貼ろうか、きみは思案のしどころって感じの表情をする。
「魔除けも開運も、何事も気持ちが大事なのっ」

今、空港でアイスキャラメルマキアートを飲んでいます。
チェックインカウンターでは「おめでとうございます」と言われたよ。
何でも今日、100人めのチェックインがぼくらしい。記念の携帯ストラップが手渡されたんだ。
これも開運かな、
では行ってきますね。留守番よろしく。
ぼくとしては長めのメール、きみにとってはきっと見当違いのメールかも。

「ほんとに行くんだ」
昨日の夜は、ぼくのマンションより空港に近いきみの部屋に泊まった。
「約束したしね」
「存在しない約束?」
きみは少しうつむき加減に小さい声で言った。
「そうかも知れないね。台風が好きだった彼女との約束。でも確かにぼくは会話もしたし」
「会話じゃなくて、話を聞いた」
ぼくの胸に顔をうずめるきみ。
「もっと言うと声を聞いた、うぅん、声の気配を感じただけかも知れないじゃない」
「そうかも知れないね。きみは正しくて、きっとそうなんだろうね」
−頭では、理屈ではわかっているつもりだよ。
「でもね」と、ぼく。
「うん、でもね」と、きみ。

最終案内を告げるアナウンスが空港のロビーに響く。
−もう行かなくっちゃ。
「メール送信!」
きみへの想いを込めて、送信ボタンをぐっと押す。
−ちゃんと戻ってくるからさ。
きみがぼくの携帯に貼った開運シールに向かって、ぼくはきみへのひとことを口にする。
「心配いらないから」
朝、寝息を立てていたきみもそろそろ目を覚ます頃だろう。
夕べ、ぼくとペアの開運シールを貼ったきみの携帯へ、メールと一緒にぼくの想いも届きますように。
by hello_ken1 | 2005-08-06 01:27 | EndlessGoodTime
<< 花火の音がふたりをつつむ 会いに行くよ >>