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プロミス #29自分のベッドに横たわり、おねえさんから手渡された写真を見ていた。そこには満面の笑顔の麗奈が写っている。おれやあーくんの間で、麗奈のことが話題になることもなかった頃だろうか、それでもおねえさんは小学校の頃だよと言っていた。 「あの頃の麗奈なんだね」 「うん、そうだよ、元気なレイだね」 「レイって呼んでたの」 「お互いにレイ、由香ねえさんって感じかな」 「よく遊びに来てたの」 「同じ町内に住んでるちょっと年下の従姉妹なんだけど、遊びに来るのはすごくたまぁにかな」 「でも、仲よかったんだ」 屈託のない麗奈の笑顔からそのことが伝わってくる。 おねえさんは数枚の写真の中から、好きなのをあげるよ、と言ってくれた。手渡されたアルバムをゆっくりとめくると、笑顔の麗奈、得意顔の麗奈、唇をとがらせた麗奈、いろんな表情の麗奈を見ることができた。 「おれ、実は麗奈のこと、よく知らないんだよね」 「祐二くんがレイのことよく知らないだろうってことは分かってたよ」 「うん」 「でもね、レイは祐二くんのことが好きだったの」 「えっ」 「はずかしいから言っちゃだめって」 麗奈はたまにおねえさんの家に遊びに来ると、そわそわとおれの家を覗いていたと言う。学校でもたまに見かけ、ここに遊びに来ると庭越しにおれを目にすることができる。祐二くんも呼ぼうか、おねえさんが麗奈に尋ねると、怒ったような表情でリビングの奥のピアノに向ったそうだ。 「これがいいな」 「そう、うん、それが一番レイらしいかも。大切にしてね」 そしておねえさんはその写真にメモを添えて、おれに渡してくれた。 「もう大丈夫だから、祐二くんにも教えてあげなきゃって思ってね。電話してあげて」 「人と話ができなくなってたんだよね」 「うぅん、ほんとは違うの。夜がとっても怖くなっていたの。だから疲れちゃったのよね」 「もう怖くないんだ」 「大丈夫よ。でも、そのことにはあまりふれないでね」 ベッドに仰向けのまま、麗奈の笑顔を手に持って、天井に腕を伸ばす。下校のときに友だちと笑い合っていた満面の笑顔が今、おれを見ている。 ー電話しても大丈夫かな。 ー自宅の番号じゃないから、麗奈を呼びだすようにおねえさんは言ってたな。 ー何て話を切り出せばいいんだろう。 笑顔の麗奈に問いかけながら、おれは一歩も進めないでいた。 「祐一くん、パパが晩酌つきあわないかだってよ、起きてるんなら降りてこない?」 母親の声が聞こえた。その声は、おれをある種の金縛りから解放してくれた。 「聞こえてる?」 おれは引き出しに麗奈の写真をしまうと、 ーちょっと、ごめんな、ハコ。 卓上に立ててある葉子の写真を伏せ、階下の母親に返事をした。 「今、降りてくよ」 (続く)
by hello_ken1
| 2007-02-25 11:32
| プロミス
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