今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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きみのもしもし #56

 どうしているのかな。
 わすれられないきみがいる。

 どうしてなんだろう。
 こんな夜に思い出すことがある。

 もうとっくの昔の話なのに。

 写真は1枚も残っていなく、
 でも、あのときの映画や本や音楽は、これから先も残り続ける。

 そんな夜には必ずきみがぼくのケータイを鳴らす。
 不思議だね。

 今の時間を大切にしなさいと、
 きみがぼくのケータイにメールする。
 そうだよね。

「もっしもっし」
 屈託のない、きみの声がぼくを優しく包んでくれる。
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by hello_ken1 | 2008-03-31 00:12 | きみのもしもし

きみのもしもし #55

 春雨が上がった後、散歩道には水たまりができていた。
「雨上がって、気持ちいいね」
「水たまりができてるよ」

ー水たまり。
 自分でそう口にしながら、なんとなく懐かしい響きを感じた。
 小学生のころ、長靴でこの水たまりに勢いよく足を入れたっけ。
 はじける水たまりが楽しかった。

ーこのスニーカーだとそれもできないな。
「もしもし、どうしたの」
 きみとの電話の途中で、ちょっと沈黙ができたようだ。
「水たまりでね」
 ケータイを耳に当てたまま、水たまりをのぞき込むと、
 雨上がりの青空と、そして真っ白な雲が写っていた。

 長靴の話はまたあとにしよう。
「空を見上げてごらん。気持ちいいよ」
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by hello_ken1 | 2008-03-30 10:34 | きみのもしもし

きみのもしもし #54

「ねぇ、もしもし、いる?」
「だからぁ、もしもし、たべるかって」
「もう、もしもし、ほしいの?ほしくないの?」

 ぼくは小さく笑いながら、きみのもしもしを聞いている。
 ちゃんと返事しなきゃいけないんだろうけど、
 きみのもしもしを耳にして、楽しい気分がぼくを小さく笑わせる。

 ほしいよ。

「もしもしっ」

 きみがふくれているのが、ケータイの向こうに見える。
 それでもぼくの楽しい気分は変わらない。

「美味しいんだから」

 ぼくはきみが買ってくるらしい朝摘み苺を楽しみに待つことにしよう。

「お願いします」
「うん」
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by hello_ken1 | 2008-03-23 23:55 | きみのもしもし

きみのもしもし #53

ー春うらら。

 お散歩カメラを楽しみながら、
 きみの住むマンションまでのんびり歩いていると、
 たくさんの春に出会えた。

 そんな春のこんにちはをファインダー越しに見ると、
 ひとつひとつにきみのいろんな顔が重なってくる。

 思いだすのが笑顔ばっかりなのは、
 やっぱり春のせいだからかな。

 そして、その笑顔のどれからも、そう、全部の春のこんにちはから、
 きみの舌っ足らずのもしもしが聞こえてきそう。

 大丈夫、そんなに遅くはならないからさ。

ー春うらら。

 もう一度、きみの笑顔に口ずさんでみた。
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by hello_ken1 | 2008-03-23 00:12 | きみのもしもし

きみのもしもし #52

「雨だね」
「春に変わっていくのよ」
「そっか」

 テーブルをはさんで、きみとの会話。

「ねぇ、もしもし」

 新しく手に入れたレンズの具合を確認していると、
 きみがいたずらっぽく目を輝かせている。

「雨をバックに写真撮ってよ」

 最初の1枚はきみを撮ることに決めている。ずっとそうだ。
 うん、きみのリクエストに応じて、この雨をバックに撮ることにしよう。

 ぼくが椅子を引くと、
 きみもうれしそうに立ち上がった。
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by hello_ken1 | 2008-03-20 12:03 | きみのもしもし

きみのもしもし #51

 ベランダに椅子を出し、陽射しに当たってみる。
 優しい陽の光がすっぽりとぼくを包む。

ーチーズでいいかな。
 きみからのメールもこの陽射しの中じゃ文字が見えない。
「フランスパンもお願いします」
 きみからのメールに電話で返信。
「もしもしぃ、もう飲み始めていないよね」
「とも言うかな。大丈夫、2本あるから」
「そーゆー問題じゃなくてぇ。もしもしぃ、聞こえてるぅ」
 ぼくは「はいはい」と頷きながら、良く冷えた白ワインを口に運ぶ。

 春を迎えるぼくらの儀式かな。
 グラスを青空にかざしてみよう。
 そしてベランダには椅子がふたつ、ぼくはきみの到着を待っている。
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by hello_ken1 | 2008-03-16 12:28 | きみのもしもし

きみのもしもし #50

 そこはとても混んでいた。ただただ混んでいた。
ーもしもし。
ーそうだね。
 ぼくらは無言のまま、その場を立ち去った。

「ね、ドライブスルーでもいいの、」
 帰り道ずっと静かだったきみが口を開いた。
「温かい珈琲、買って」
 そうだね、今日は疲れたものね。

 どうもぼくらはふたりして人ごみが苦手なようだ。
 きみは助手席で温かい陽射しに包まれて、また寝息をたてはじめた。
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by hello_ken1 | 2008-03-10 00:11 | きみのもしもし

きみのもしもし #49

 休日の朝、きみより早めに目を覚ます。
 背伸びをひとつ、そしてキッチンに立ち、パンをトースターに入れ、ミルクを温める。
 合わせて珈琲豆を挽く。
 リビングの窓からみえる空が澄んでいる。きっと今日は一日快晴だな。

「おはよ。朝だよ」
「ん」
「食後の珈琲、ぼくのぶんは入れてるけど」
「ん」
「青空だよ。きっと散歩にいいよ」
「ん」
「もしもし」
「ん、もしもし」

 休日の朝、ぼくはきみより少しだけ早めに目を覚ます。
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by hello_ken1 | 2008-03-09 09:46 | きみのもしもし

きみのもしもし #48

 ふたりならんで、珈琲を飲んでいる。
 まっすぐ前を見て、珈琲を飲んでいる。

ー美味しいね。
ーうん。

ーあの彼女の赤い帽子、きみにも似合うんじゃないかな。
ー彼氏が連れている子犬、あなたも飼えばいいのに。

ーもしもし。こっちはそろそろお店が混んできたよ。
ーこっちはまだぼくひとりかな。

 隣の椅子にひじをかけ後ろの店内を確認してみる。正確には一組のカップルとぼく、3人だ。
 会えない日、同じ時間に、それぞれの近くでカフェに入る。
 右隣がきみの席、きみにしてみれば左がぼくの席、通りの見えるテーブルでぼくらは同じ時間を共有する。

ーわたしの珈琲、添付するね。
ーぼくのケーキも送ったげようか。
ーあっずるい、ひとりだけ。

 ぼくのテーブルから見える澄みきった青空に、きみの笑顔が重なった。
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by hello_ken1 | 2008-03-02 11:23 | きみのもしもし