今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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きみのもしもし #81

 夜中の3時、きみに起こされた。
 どうしても頼みたいお願いがあるの、ときみに起こされた。

 そして今、環状7号線を南に向って車を走らせている。
 ワイパーが小雨をはじき、所々で工事中のため車線が少なくなる。
 そんな深夜の環状7号線、トラックがぼくの右側を追い越していく。

 他愛もない用事だった。断ることもできたのかも。
 でも、こんな時間のきみのお願い、叶えてあげなくっちゃ。
「もしもし、あのね」
 申し訳なさそうなきみの声が、耳の奥の方でまた聞こえた。
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by hello_ken1 | 2008-06-29 11:39 | きみのもしもし

きみのもしもし #80

「忙しいのっ」
 もしもしも、こんにちはもなく、いきなりの言葉。
「えっ」
「だから、忙しいのっ」
 きみの切羽詰まった声、そしてケイタイは切れた。
 何があったのだろう。
 でも困っている様子ではない。
 単に忙しい。
 なんとなくきみの慌ただしいときの表情が目に浮かんだ。

 それから30分後、きみからのメールが届いた。
ーもしもし、あのね。
 照れ臭そうにメールを書いているきみがそこには見え隠れする。
 落ち着いたんだね。
 ぼくはちょっとだけほっとして、2杯目の珈琲に口をつけた。
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by hello_ken1 | 2008-06-28 10:31 | きみのもしもし

きみのもしもし #79

「まだ梅雨なのよねぇ」
 きみからのケイタイを片手に、ぼくは空を見上げる。
 確かに今朝も青空のかけらすらない。
「空気、湿っぽいし」
 立ち上がり、ガラス窓を開けてみる。
 まとわりつくような湿っぽさ、そして空気は冷たい。
「そうだ、そこから通りを見てみて」
 窓から身を乗り出し、垣根の方に視線を移す。
「ほとんど赤っぽい、ピンクの花、咲いてないかな」
 あぁ、あれか。
「咲いてるんだ。よーし、夏は近いぞ」
 疑問符が浮かんだぼくに、きみは言葉を続けた。
「その花ね、キョウチクトウって言ってね、夏に咲くのよ」
 この梅雨空のした、夏の入口を見つけたきみはうれしそうなトーンに変わった。
「もしもし、だからね、、、」
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by hello_ken1 | 2008-06-22 13:37 | きみのもしもし

きみのもしもし #78

ーもしもし
 メールのタイトルがそうだった。
ーもしもし、あのね。
 本文の書き出しもいつもの口調。
ー横浜の桟橋にいるの。
 あぁ、あの場所か。以前ぼくが会社をさぼって、ひとり散歩をしたところ。
 あのとき、きみが「どこでもドアがあればすぐにそこに飛んでいきたい」と言っていた場所。
ーあなたがひとりで座っていたカフェにいるの。
 きみはケイタイで撮った写真をつける。
 そうだね、そのカフェだね。よくみつけたね。
ーそこはカフェモカが美味しいよ。
 ぼくはきみへの返信にそう添えた。
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by hello_ken1 | 2008-06-21 18:56 | きみのもしもし

きみのもしもし #77

 きみの背中、きみの後れ毛、さっきまでのしょっぱいうなじ。
 きみの寝息がかすかに聞こえる。
 少しだけ開いた窓から、梅雨のひと休みの風がカーテンをゆらす。

「もしもし、寝てるの」
「、、、ん、起きてるよ」
「いいのよ。起こしたげる」

 今、起きているのは、ぼくのほう。

 柔らかなきみの寝息は、ぼくの張りつめた疲れを溶かしてくれる。
ーありがとう。
 きみは寝息を立てている。
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by hello_ken1 | 2008-06-15 23:33 | きみのもしもし

きみのもしもし #76

「ねぇねぇ、さわっていぃいぃ?」
 一月ぶりに髪を切ってきたぼくの頭に視線を向けて、きみが言った。
「すごく短くしたんだね」
 きみは興味深げに、ぼくの背後にまわり、後頭部の短さも確認する。
 ぼくが返事をするより早くいつもだったらすぐさま触ってくるはずのきみが、静かになった。
「もしもし、おにいさん」
 ぼくは背後のきみに振り返る。
「白髪があるよ」
 いじわるっぽく、そしてすごい秘密を見つけたように、きみの目が輝いている。
ー少しくらいあるよ。
 と、答えようとするぼくの髪に手を伸ばし、
「でも、うん、合格。いい髪型じゃん」
 と、きみが微笑む。
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by hello_ken1 | 2008-06-15 11:13 | きみのもしもし

きみのもしもし #75

 きみはたまに土のついた花を買ってくる。
 春と夏の間、梅雨にも初夏にも属さない、すっぽりと空いたような微妙な季節。
 ぽわんとした幸福感の漂う時期。
 そして、気づかないうちに鉢植えとなっている。
「もしもし」
 自慢気なまなこがぼくをのぞき込む。
「もしもしってば」
 手を引っ張られてベランダまで行く。
「ねっ」
 土いじりの後片づけがまだ済んでいないベランダから、
 青紫の色が目に飛び込んできた。
 今年もきみのおかげでよい季節が迎えられました。
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by hello_ken1 | 2008-06-08 12:14 | きみのもしもし

きみのもしもし #74

窓から差しこむ白い月明かりが、
はだけたきみの背中を、
青白く浮きだたせている。
耳をすまして聞こえてくるのは、
冷蔵庫のモーター音と、
そして、きみのゆっくりとした寝息だけ。
昼間に「もしもし」と子供みたいに駄々を言っていたきみとは違い、
黒髪が少しだけしっとりとして、まるで別人のよう。
数時間後のきみの一言が楽しみだな。
やっぱり「おはよう」じゃなくって「もしもし」から始まるのかな。
ぼくは月明かりに感謝して、もう少しだけきみの寝息を聞くことにした。
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by hello_ken1 | 2008-06-08 03:45 | きみのもしもし

きみのもしもし #73

 冷凍庫でキンキンに冷やしたジンを片手にテレビに向う。
 きみはすでにひとりソファに陣取り、グラスの白ワインを傾けている。
 テレビでは深夜のグルメ番組が、流行のスポットを紹介している。
 その情報をぼくらは別の角度から、集中することもなく何となく、ただ時間のすぎるままに見つめていた。
 ケータイの青緑の点灯、サイレントモードでのぼくのケータイが着信を知らせる。
ー今テレビでやってたお店、今度ここ行こ。
 ぼくはソファのきみに視線を向ける。
 きみは何食わぬ顔でテレビに向いたまま微動だにしない。
 そんなきみにケータイから返信をしようとしたとき、
ーもしもし、決めた、明日行こ。
 そしてきみはそそくさと明日のおでかけの準備を始めた。
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by hello_ken1 | 2008-06-01 12:20 | きみのもしもし

きみのもしもし #72

「傘はささないで」
 きみが小さくつぶやいた。
「この1本にしようよ」
 ぼくが開こうとしている傘を押さえて、きみは自分の傘をぼくに渡した。
 雨足は少しだけ強くなった様子。
 ぼくは空を見上げる。
「もしもし」
 ぼくの腰に手を回すきみ。
「濡れないようにくっつかないとね」
 久しぶりの相合い傘、ぼくはきみの肩に手を回し、きみと体をくっつける。
「たまにはいいね」
 きみはにっこりと微笑んだ。
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by hello_ken1 | 2008-06-01 03:21 | きみのもしもし