今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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<   2009年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

Midnight Zoo #8

「ねっ、いないでしょ」
 桜子がめくる卒業アルバムのどのページにも、確かに藤崎晴香の写真は載っていなかった。
「そしてこのページ」
 巻末の名簿一覧、そこにはCクラスの生徒の中に藤崎の名前は掲載されていた。

 まだ湯気が立ち上がっている珈琲に航が口につけ桜子に視線を移すと、そこには腑に落ちない不安そうな表情の彼女が航を覗き込んでいた。
 心霊写真を見つけた時の、いもしない人影を窓ガラス越しに見つけた時の、そんな印象を航は桜子から見て取った。
「普通に考えるとね」
 冷静に分析しようとしている桜子、それでも声は少し小さい。
 航は少し落ち着かせようと、言葉を続ける桜子の首筋にキスをした。
「だから。。。聞いてよ」
 桜子の声が少し大きくなった気がした。そして、桜子も航にキスを返す。
「文化祭や体育祭とかのイベントの写真はね」
 航は服の上から桜子の胸に触る。
「もぉ、まじめに聞きなさい」
 舌を出す航は笑いながら桜子に頷く。
「タイミングとか運とか、写りたいとか、そうじゃないとか、あるじゃない」
 桜子はアルバムのページをイベントのページから集合写真のページに移動させた。
「だから3年間で1枚もイベントのスナップに写っていないのも、ありだと思うのね」
「たしかにおれのもないに等しいな」
 あなたはいろいろさぼってたでしょ、桜子がやっと笑った。
「そして集合写真を撮る日にどうしても学校行けなかったとか」
「そうだとすると、集合写真の右上にまぁるく吹き出しみたいにぽつんと載ってくるわよね」
 航はまた珈琲を一口飲むと、自信たっぷりに答えた。
「クラスのアルバム委員が集合写真に漏れたクラスメートのフォローを忘れたんだな」
「そぉ、かなぁ」桜子はあまり納得できなかった。
 確かに航の推測は当たったいるのだろう、普通に考えると航の考えに行き着く。言われてみれば何ら不思議もない。

 航はそんな桜子を引き寄せると、フローリングに座ったまま、桜子を後ろから包み込んだ。両腕を桜子のお腹に回し、うなじを舐めるようにキスをする。
 あっ、桜子はつい吐息を漏らす。
 しよか、航が耳元で囁く。

 気がつくと、外は暗く、カーテンはアルバムを見ていたときのまま閉められていない。
 ガラスに映る裸のまま髪の乱れた桜子と航。
 よくみると、少しふくらんだ自分の乳首もガラスに映っている。

「えっ」瞬間、桜子は硬直した。思わず声がでた。
「どした」
 航にあれを伝えたい。でも、これ以上声がでない。
 桜子はガラスに映るふたりの背後に立つ女性と目が合ったまま、航の腕を強くつかむ以外、何も身動きがとれなかった。

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-01-25 10:53 | Midnight Zoo

きみのもしもし #102

ー疲れてない?
 となりからきみがぼくを覗き込む。
ーんなことないよ。
 ぼくは笑顔をつくってきみに応える。
ー嘘つきね。
ー悪い嘘じゃないと思う。
 きみはぼくの頭を抱え込み、自分のもものうえに乗せる。
 ぼくの顔はきみのお腹にも触れる。
ー柔らかいね。
ーもしもし、それっていい意味?
 きみは柔らかい笑顔でぼくに尋ねる。
 ぼくはきみの手に触れる。
 週末のひととき、
 きみとぼくはとってもとっても小さな声で会話をかわした。
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by hello_ken1 | 2009-01-18 19:41 | きみのもしもし

Midnight Zoo #7

 桜子は高校時代の卒業アルバムを開いていた。
 男女共学だったけど、地元ではそれなりの進学校で学生の数は多くはない。
 クラスもABCの3クラス、50名ずつで男女比は半々。毎年クラス替えはあったが、高校3年生の時のクラス替えは希望進路に沿って、文系がAクラス、理系がBクラス、Cクラスは医学部向けの特別クラスとなっていた。
ー懐かしいなぁ。
 目的を持ってアルバムを引っ張り出したが、いざページをめくってみるといろんな思い出がよみがえる。3年間の行事が時系列に並んでいて、ページをめくる桜子の手を止める。
ーそうだよね、3年間とも航と同じクラスだったんだものね。
 講堂のステージの裏で、航に胸を触られたことも思い出す。ふふふ。
ーどっちが誘ったんだかなぁ。
 右手をそっと左の乳房にあててみる、あのときの航の手の感触を思い出すように。あのときと同じように桜子は鼓動が早くなるのを感じた。

 ページを更にめくっていくと、いろんな写真でその当時の航を思い出す。
ー恋人って感じじゃなかったなぁ。
 確かにペッティングは数えきれないほど、それもいつも講堂のステージの裏、後輩に見られていた時もあったけど、そんなの気にするよりも航と一緒に感じる震える感覚を楽しんでいた。
ーセックスだけはしなかったなぁ。
 そしてふたりはそれぞれ、東京の大学と地元の大学へと進む。
ーあれから10年かぁ。

 先日、航は明け方戻ってきて「隣のクラスの藤崎」と言っていた。
 だからどうこうということもないが、恋人なんて呼ばれなくても、高校時代とちがって今となってはちゃんとセックスの相手でもある自分の前でうれしそうな、不思議な顔で女性の名前を口にさせるのは、やはり気になる。
 3年生のときの自分らのクラスには藤崎なんていなかったから、BクラスかCクラスのことなんだろう。籐崎の顔が少しでも記憶にあれば卒業アルバムをみると思い出すはず、そう思って本棚の端に立てていたすこしほこりのかかった卒業アルバムを開いてみた。
ー航のことを思い出しすぎ?
 桜子は3年間の行事の中で、「籐崎」でピンとくる顔に出くわさなかった。
 3年生のときのクラス別の集合写真にも、ひとりひとりの顔写真にも、ピンと来るものはなかった。まさかね、と思って自分のAクラスもきちんと見てみたが、やはり同じだった。
ーん。
 「おかしいな」と思った瞬間、誰かに見られている、ありもしないはずなのに背中に冷たい視線を感じた。桜子はワンルームの自分のマンションのすべての壁を舐めるように見つめ、「気のせいよ」と視線をアルバムに戻した。
 そして、今度は巻末の名簿を順に追ってみる。
 Bクラスには籐崎なんて名前はなかった。Cクラス、にもないだろう。
ーえ。
 予想に反して、そこには「籐崎」の名前があった。
「とうざき、籐崎、籐崎晴香、はるか」
 名前を口にしてみると、また背中に冷たいものを今度はかなり強く感じ、身震いまでした。
 アルバムの写真だと見つけられない藤崎が、巻末には活字として存在していた。

ー籐崎晴香、あなたはどこにいるの。
 桜子は記憶に何かひっかかりを覚え、もう一度アルバムに目を落とした。

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-01-12 18:30 | Midnight Zoo

きみのもしもし #101

ー初夢は、、、
 それはきみのもしもしで始まった。
「教えて」
 めずらしく電話をかけてきたきみ。部屋の空気はぼくの鼻の頭を赤くする。
「どんな夢みたの」
ー初夢はね。
 そこでぼくは言葉を止めた。
「もしもし、いい夢だったの」
「うん、そこそこ」
「そこそこってなぁに」
ーそこそこって最高ってことだよ。
「まぁね」
「ふーん。ねぇ、もしもし」
 初夢の後、きみのもしもしが2回も聞けた。
「きっといい年になるよ」
「やっぱりいい夢だったんだ」
「そうだね」
 初夢よりももっとリアルに、
 きみの声がこうして聞ける。
「電話ありがと」
 きみはふふふと笑っている。
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by hello_ken1 | 2009-01-04 18:51 | きみのもしもし

Midnight Zoo #6

「どうしてなんだろう」
 ひなのはリビングのテーブルにひじをつき、両頬を包むような姿勢で考えていた。
 週末の朝、今日は快晴、すでに朝日がレースのカーテンを通してテーブルまで届いている。
 青空も見える。薄いブルーだ。雲一つないすがすがしい朝。
ーでも、
「不思議だなぁ」
 目の前にあるケイタイの履歴を再確認してみる。
 メールの受信ボックスに瑛太からのメールは数えるほどしかない。女友だちや瑛太以外の男の子からのメールの中に埋もれている感じ。送信ボックスには瑛太宛のメールはきちんとそれなりの数、存在している。
ー電話の履歴はどうかな。
 履歴を表示してみるまでもなく、分っていた。
 瑛太宛の発信履歴はない。瑛太からの着信履歴は山ほどある。と言うよりも着信履歴は瑛太からのものしか存在しない。
 ひなのはその着信履歴を見て、瑛太の優しい声を思い出すより先に、少し怖いものを感じた。不思議な感覚から、そうではなく、ストーカーという言葉の響きから受ける印象によく似ていることに気づいた。

「どうして毎回電話なのかな」
「メールじゃ気持ち伝わんないだろ」
「でもさ、メール方がうれしい時もあるんだよ」
「ないよ。だってメールは所詮キャラクターじゃん」

ー確かにキャラクターかも知れないけどね。
 あのときはそう答えようとして、ひなのは言葉を飲み込んだ。
 そして今は、自分に聞こえるように口にしてみた。
「キャラクターを見て、そのメールを打っている瑛太を想うのも、けっこう良いものなんだよ」
ーどうして、わかんないのかなぁ。

 やかんにお湯が沸いている。湯気がやかんの口から勢いよく換気扇に向って吐き出されている。
 ひなのはキッチンの戸棚からドリップ式の珈琲パックを取り出した。
ーそう言えば、

「豆から珈琲いれるの苦手だって言ってたよな」
 あの日のお昼まだベッドから起き上がっていないのに、いきなり、そして唐突にケイタイから瑛太の声が聞こえた。
「、、、おはよ」
「あっ、おはよ。寝てた」
「いいよ。どしたの」
「ドリップ式の珈琲パック、買った」
「え、意味わかんない」
「これきっとめんどくさくないよ」
 今から持っていくからとか、だからいるかどうかを確認したいから、じゃない。
 まったくメールでいい内容の電話も瑛太はしてくる。

 ひなのは珈琲パックにお湯を注ぐ。
 優しい香りがキッチン中に広がる。それはリビングにも、そして部屋中に広がるんだろう。
「まぁいいか」
 珈琲カップを片手にテーブルに戻ると、ケイタイを手にしてみた。
ーふふ、電話してみよ。
 ひなのは自分が微笑んでいる事も、また不思議に思った。

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-01-03 10:31 | Midnight Zoo