今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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Midnight Zoo #11

「一度だけだったら、そんなに気にもとめなかったのかも」
「えっ、一度だけじゃないの」
 今、目の前に瑛太がいる。
 連絡に電話ばっかり使う瑛太がいる。
 最近少しその電話がうざいと思うようになってきていた。
 マンネリだからか、倦怠期に突入なのか、とにかく他の男性でもつかまえて自分の瑛太への感情の変化を確かめようとまで、思い始めていた。
 でも、今、目の前に瑛太がいる。
 いつもはメールしかしないわたしが電話かけたら、しどろもどろになった瑛太がいる。
ー落ち着くのかしら。
 そうかもしれない。
 ただ、妙な夢をみたから、それから変なことが続いているから、それでわたしは不安になって、マンネリで倦怠期かなとわたしが感じ始めている瑛太でも、気心が知れている分、安心できるのかもしれない。
ー瑛太だときっと落ち着くんだ。
 でも、誰と比べて。
 わからない。
 誰と比べているんだろう。
 比べる対象さえいないじゃないか。
ーきっと今は瑛太がいいんだ。
 ほんとまだよくわからない。
「そうじゃないんから電話してきたんだよね」
 電話したのはマンネリをどうにかできないか、ちょっとそう思ったから。
 そのあとに夢は見ている。でも、いいや。
「うん」

「幽体離脱みたいだね」
「幽体離脱?なんか久しぶりに聞くね、その単語。今はブームじゃないでしょ」
「幽体離脱にブームなんて概念ないでしょ」
ーやっぱり瑛太は変。そこがいいのかも。
「何笑ってるんだ」
ーほんとだ、わたし口元がゆるんでる。
「うーん、わたしには幽体離脱ってしっくりこないなぁ」

「でもね、次はね、ベッドサイドに立っていたのよ。目が覚めたらいたの。怖くて慌てて目を閉じて、もう一度目を開けたらもういない」
 瑛太は真剣に聞いてくれている。
「その次はね、夜とっても遅くに歯を磨いていたら鏡に映っていたの」
「顔見たのか」
「うぅん、身体の右半分だけ。怖くて座り込んじゃったんだけど」
「振り返るともういないってことかな」
「でも何もしてこない。きっとただ見つめられているだけ」
「地縛霊?」
「わかんないよ。でも思い返しても悪意があるとか、恨みが残っているとか、なーんかそんな気はしないのよね」
「見てるだけ?」
「そう、昨日も深夜にガラスに映ってた。えっと思って振り返ったら」
 瑛太が身を乗り出している。
「目を合わさないように、後ろ向きにまわってすーっと消えちゃったの」
「怖くないかい」
「怖いって言うより、どうして、何をしたいの、何か伝えたいことがあるのって聞きたい感じ」

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-02-22 11:19 | Midnight Zoo

Midnight Zoo #10

 ひなのはナチュラルローソンにいた。
 ナチュラルと言うくらいだから、身体に優しく健康によい食品が置いてある。そしてこのお店の前にはステンレスのテーブルが4卓、なんとなく余裕の配置で用意されていた。その1番端の奥に座って、ひなのはサンドイッチを頬張りながら映太を待っていた。
 車一台が通っても歩行者にじゃまにならない程度の道幅の道路が、お店の前を通っている。道路からテーブルまでは数メートルあり、かなりの解放感がある。
 その解放感もひなのは大好きだった。

 ひなのが映太に電話をしたのは10日前、いきなりの電話で映太もとまどっていたけど、なかなか休みの都合もつかず、ふたりが会うのは今日になってしまった。
 あの日、電話をかけたときはいたずら心も多分にあった。
 いつもメールを使わない映太、メールばかり使うひなの、もしかしたらひなのから映太に電話をかけたのは初めてかも知れない。いや、そう、初めてだった。電話口でちょっとしどろもどろになる映太のことが想像もできなく、ひなのも驚いた。
「えっえっえっ」
「なに言ってるのか、わかんないよ」
「だ、だからさ」
「電話かかけてこられるとそんなにまずいことでもあるわけ」
「そんないじゃないよっ」
 映太の語気が少し強くなって、面白かった。
「で、用事はなに」
「用事がないと電話しちゃいけないわけね」
「いやいやいや」

 そしてその日から日までの10日間、ひなのは不思議な体験をしていた。
 映太に電話をかけたときには、まだそんな体験をしていなかったから、単純に楽しい気分で、他愛もない会話をするだけのために、誘ってみただけだった。
 その不思議な体験は怖いという感覚から、どうしてなんだろうと理由が知りたい思いに変わっていた。
 今日はそのことを映太に聞いてもらおう。
 きっと気味悪がるだろうなと、ひなのは確信していた。普通に考えると、ひなのも気味悪がるはずだし、不眠症になってもおかしくないだろう。
 でも、ひなのはここ数日そうとはとらえなかった。気味が悪いと思うよりも、どうして、なぜの答えが知りたい気持ちの方がはるかに強くなっていた。
 サンドイッチをもうひとくち頬張りながら、とにかく映太に話を聞いてもらいたい、早く来ないかなぁと、ひなのは映太が来るのを道路に目を凝らしながらずっと待っていた。

 そう、ある夜、はじめて見知らぬ女性が夢に現れた。
 その夢はひなのが寝入っているところからはじまった。自分がベッドで寝ている、それを真上から見ている自分。ふーん、わたしはこんな寝顔なんだと、ひなのは思った。けっこうかわいいじゃん。そこまではよかった。寝ている自分を見下ろしている自分の視界にひとりの女性が入ってきた。背の高い細身の女性、髪は落ち着いたブラウン色で肩の辺りまで伸びている。顔色は色白と言うわけでもなく、ただ静かに寝ている自分を見つめていた。背の高い女性と寝入っている自分、初めての夜はそこまでだった。

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-02-15 01:57 | Midnight Zoo

きみのもしもし #103

「フィルムある」と、きみが聞いてくる。
「うぅんとね、撮ってもらいたいの」
 今日、きみがここに来て、なんとなく落ち着かないのはそんなおねだりがあったからかな。
 フィルムをセットしたポラロイドをきみに向けて、シャッターを切る。
「あっ」
 ギーガチャン。
「もしもし、いきなり撮っちゃだめでしょっ」
 出てきたフィルムに浮かび上がる絵をきみにみせる。
「もしもし、、、」
 ポーズする間もなく撮られた写真は、それでもきみの笑顔を引っ張り出す。
「悪くないわ」
 きみは満足気にフィルムを手にして、ベッドに腰を下ろす。
「優しい写真ね」
 きみの真新しい色のマニキュア、その手を写した写真、きみはそれを見て微笑んでいる。
「もしもし、でもね」
 ぼくはきみのもしもしをふさぐようにキスをする。
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by hello_ken1 | 2009-02-08 17:01 | きみのもしもし

Midnight Zoo #9

晴香はぼんやりと天井を見つめていた。
あぁ何だったんだろう。
いろんな夢を見ていた気もする。
タイムスリップしてあのときに戻っていたの。それともあのときのことを単に思い出していたの。思い出が夢で現れたの。

いろんな光景が脈略もなくつながっていた。だから夢なのかも知れないな。
昔のことも出てきたし。
住んだこともない部屋にもいた。いや、違う、部屋の一部になっていた。
その次は、見知らぬ恋人たちがセックスをする様子をそばで見ていた。
彼らは顔見知りかもしれない。でも、後ろから見ていただけで直接顔は見ていない。たぶん。
窓ガラスに映った恍惚な眼の女性と視線があったかも知れない。気のせいかも知れない。

こんなことが続くと、また何をしだすかわからないな。
ずっと以前だけど、ただ幾度となくこんな感覚が続いたこともある。
だから落ち着かせるために当時、母親はわたしに学校を1年休ませたんだもの。
自分から1年間だけ社会人生活から足を洗ったこともあった。
そのときはそれでもこんな夢を見ることは止まらなくって、海外に逃げた。
学校を休学して次の年次に入っても、3年働いた会社を辞め海外に行っても、何が変わったんだろう。
ちょっと回復しただけで、すっかり良くなることはなかったんだ。

夜、居心地の良いバーで流れる時間に身を任せる。
微笑むだけで、誰とも話しもせず、一時の関係も求めず、ただひとり心を解放する。
真夜中はみんな違う顔をしている。昼間と違う世界を求めている。
みんな現実逃避なのかも知れないし、その時間が本当の姿なのかもしれない。
そこには確実に昼間とは違う世界が、人たちが存在する。
でも所詮それは、線を引かれた限られた空間だけに存在するのかも知れないし、
空間だけじゃなくって、時までにも囲まれているのかも知れないな。

とにかく休学したり、海外に逃げたり、昼間とは別の空間に身を置いたりして、この異感覚に包まれない、再現しないようにしてきたと言うのに。

どうしてまた。
晴香はひとつため息をついた。

また再発したのか。
どうすればいいんだろう。
夢を見る。昔のことと重なるような光景も現れる。見た事もないところに自分がいる。そこにはどう見てもその時を生きている人もいる。
わたしはここにいると言うのに、
わたしは時間を、空間を飛び回っている。
そしてそこにいる人を観察している。
もし相手に気づかれたら、わたしはここに戻ってこれるのだろうか。
もし相手に話しかけられたら、ここに残っているわたしはどうなるのだろうか。

晴香の天井を見つめる眼は次第に険しいものに変わりつつあった。

(続く)
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by hello_ken1 | 2009-02-01 01:01 | Midnight Zoo