検索
カテゴリ
infoMidnight Zoo プロミス きみのもしもし そのひと 黄緑色の手の女の子 海の明かり B.O.D.Y. EndlessGoodTime another story OldFashionedLoveStyl 以前の記事
2010年 03月2010年 01月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 04月 最新のトラックバック
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
きみのもしもし #16
「もしもし」
「。。。」 「もしもし」 「知ってるよ」 ーうん? 「今日がこれから暑くなるのも」 「、、、」 「今日がやっぱり会えなくなったのも」 ―うん。 「でも それが今日。そんな日もあるよね」 ごめん、と一言、ぼくはケイタイをテーブルに置いた。 ー今日、もしもしって言ったのは、ぼくだけだったね。 なぜかそんなことが気になった。 #
by hello_ken1
| 2007-06-17 10:18
| きみのもしもし
プロミス #44「おかあさん、正直、信じがたいとは思いますが、」 「先生、止めてください。ひとりっこなんですよ」 明の母親と由香の彼氏をとりまく空気は、すでに流れを止めていた。 休日の診察室で、母親と彼氏が静かに言葉を交わしている。 今にも壊れそうな母親、できるだけ事実を正確に伝えようとする彼氏、すでに言葉は行き詰まりかけていた。 「セカンドオピニオンってご存知ですか」 「言葉くらいは」 「もう少しわたしの方で検査してみますが、もし結果にご納得いかないようであれば遠慮なく言ってください」 「あとどのくらいあのこは」 「詳しくはこの後の検査でわかると思います」 「先生の今の考えでいいんです。あのこは、明は、あとどのくらい笑顔でいれますか」 「それがわかるためにも、このまま検査をさせてください」 明の母親は診察室を出ると、携帯電話を取りだし、フランスに単身赴任している夫に電話をしてみた。 ーいつも肝心な時にあなたは電話にでないんだから。 母親は夫の留守番電話に、メッセージに気づいたら折り返し電話をくれるように伝言を残した。 個人病院と言えども、それなりの広めのロビーで母親はひとり、つながらない携帯電話を持ったままソファーに腰かけていた。病院の診療は休みのため、ロビーの電灯は半分が消えている。少し薄く暗い中で、母親は何を見るともなしに、足先のその先の床を見ていた。床はきちんと清掃されているようで、電灯の明かりを反射している。 ーこの病院はちゃんとしているのねぇ。床もきれいだし。 母親は何かにすがりたい気持ちで一杯だった。 「おはようございます」 反射的に涙をぬぐい、母親が顔をあげると、由香が立っていた。 「お早いですね。もう明くんも起きてますよ」 「あなたは」 「明くんの友だちの祐二くんの友だちです。明くんのお母様ですよね」 「あっ、明の入院のときに先生に口を効いていただいた」 「はい、あの先生とも知り合いですから」 母親はこの女性にいっそのこと今の気持ちを聞いてもらおう、聞いてもらって少しでも気を楽にしてもらおうと思ったが、その気持ちはすべて飲み込むことにした。 「失礼ですが、あの先生は優秀なんですよね」 「優秀かどうかはよくわかりません。でも、患者さんのために一生懸命になるひとですよ。まだまだ若いので頼りなく映るかも知れないけど、経験が足りない分はその一生懸命さで十分おぎなっていると思います。だってわたしとのデートより患者さんとの会話をとるひとですから」 由香の苦笑は、明の母親に十分な安心感を与えた。 「そう、優秀な先生と言うより、いい先生じゃないかな」 「わたし、いい先生が明の担当でよかったです」 「それは先生に言ってあげてください。よろこびますよ。あっ、ちょっとごめんなさい」 由香の携帯がふたりの会話に割り込んできた。 「うわさをすれば何とやらです。ランチのお誘いかな。先生がわたしに会いたいそうです。ゆっくりデートもできないみたい」 軽やかな足取りでロビーを去って行く由香を見送りながら、母親はゆっくりとソファーから立ち上がった。 ー笑顔、笑顔。 母親はやんちゃだった小さい頃の明を思い出しながら、病室へと向った。 (続く) #
by hello_ken1
| 2007-06-10 11:38
| プロミス
きみのもしもし #15
「週末は何をしてるの」
さっきまではしゃぐように話していたきみの言葉が止まった。 このケイタイの先には、きみとも、そして誰ともつながっていない様。 「どうしてかなぁ」 きみの不機嫌そうな、さみしそうな声。 「そんなこと聞かないでほしいな」 そして、きみは優しく言葉を続ける。 「週末はあなたと一緒にいたいんだから」 ーそうだよね。だから電話をしてるんだよね。 会えない週末、きみとぼくはもしもしで一日をはじめる。 #
by hello_ken1
| 2007-06-10 09:36
| きみのもしもし
プロミス #43明が夢から目覚めると、朝日の差し込む窓側に由香が立っていた。 「おはよう、明くん。よく眠れたかな」 「ああ、おねえさんか。おはようございます。痛み止めが効いたのかな、夢まで見ちゃいましたよ」 寝ぼけ眼の明は、朝日の逆光で輪郭がぼんやりと映る由香を、不思議な感じで見ていた。 由香は包まれた光の中から動こうとはしなかった。 「今、何時ですか」 明のその問いかけに、由香は答える気がないようにうっすらと微笑んでいた。 「まだ早い時間なんですよね」 由香はだまって頷いた。 「何かありましたか」 由香は窓枠に背もたれると、静かに明に話しかけた。 「どうして昨日は信じてくれなかったのかな」 いつもの由香の声と違う、その声色に明は背中に冷たいものを感じた。 「わたしにあそこまでさせなきゃ、信じてくれないのかな」 「、、、麗奈」 「昨日は最後まで信じなかったのに、今日は素直に信じるんだ」 「まだ信じてないよ」 「でも、今、わたしの名前を口にした」 明は由香が手に何か持っていないかを、視線だけで確認しようとした。 「明くんも祐二くんも信じてくれなかったから、また夕べ、ママを傷つけちゃったじゃないの」 由香の両手は腰に隠れていた。単に後ろに回しているだけなのか、それとも昨日の葉子みたいに危ないものを持っているのか、明はゆっくりと視線を由香の顔に戻した。 「窓ガラス割っちゃったし、これでまた診療所に戻されるわ」 「おねえさん、麗奈のこと何を知っているんですか」 「だから、わたしが麗奈だって言ってるでしょ」 上半身を前のめりに、きつい口調で明に吐き捨てた。 「会いに来てくれるとずっと思っていたのに、ずっとずっと待っていたのに、明くんも祐二くんも誰も会いに来てくれない。電話も手紙も全然ない」 「夢を見たんだ」 隠れていた由香の手もとに朝日の反射で光るものが見えた。 「麗奈とゆっくりと話をしている夢を。何を話しているってわけじゃないんだけどさ、そこにはゆうちゃんもいて、3人が笑顔で輪になっていて」 「そんなわけないじゃない。ずっと待ってたんだもん、ひとりだったんだから」 「そうだよね。でも夢の中じゃ、小学校の時遠くからおれが見ていた麗奈の笑顔がそのままで、屈託もなく笑っているんだ」 「ずっと待ってても来てくれないから、ようやく外出許可がでたのに、ママをガラスの破片で傷つけちゃったから、また診療所に連れ戻されるわ」 「ママは偶然だってわかってくれてるよ」 明の言葉を遮るように、絞り出す声が続いた。 「ちゃんとわたしに言ってよ。ちゃんと約束してよ、ぜったい会いに来るって、わたしのこと忘れてないって、ずっと忘れないって。約束してよ」 朝日の差し込む角度が少し変わったのだろう、由香の表情がわかるようになった。そして、由香が右手首につけている銀のブレスレットがその光りを反射していた。 明は、きょろきょろして落ち着かない由香にそっと話しかけた。 「麗奈の夢を見たよ。早く会いに来いって、麗奈が夢の中で言いに来たんだ」 (続く) #
by hello_ken1
| 2007-06-03 10:16
| プロミス
プロミス #42「なんかまだ頭がぼーっとしているの」 Tシャツに短パン姿の葉子が、おれを部屋に通す。 数時間前に薬を飲ませて、おねえさんに着替えさせてもらったままの格好が、寝ぼけ眼の表情と相まって、とっても艶っぽい。 「あと三十分だけ寝てもいいかなぁ」 葉子があくびを飲み込もうとしているのがわかる。まだ薬が残っているのだろう。 「いいよ。気にするなよ。モンブランは冷蔵庫に入れておくね」 「なんだっけ、モンブランって」 ーえっ。 「買ってきたよ。あとで一緒に食べよう」 「目が覚めても、祐二はそばにいるよね」 最後の方は聞き取れないくらいの声、でも葉子の目はうっすらと開いている。睡魔に完全に吸い込まれる前、残っている少しの意識で葉子がおれを見つめている。 その眼差しに、そのうっすらと開いた目に、おれはふと違和感を感じた。 ーアイニコナイ。 葉子の体から、いや、その視線から声が聞こえた気がした。おれはまた心の声にふれたのだろうか。 ーだから会いに来たのに。なのにわたしだと気づかないのはなぜ。 「ハコ、どうした?」 おれは葉子の顔をのぞき込んだ。 ーきみも明くんと同じ。わたしだと気づかない。 ほとんど眠っているはずの葉子の口元が、異様につりあがり、笑っている。 葉子を起こそうと、肩に手を伸ばすと、反対に葉子がおれの手首をつかんだ。指の跡が手首につきそうなくらい強いつかみかただった。 「安心していいよ、手首を離してくれないか、ハコ」 ーまだ間違えてる。気づかないの。 葉子はおれの右手首をつかんだまま、自分の左胸に押し当てた。 ー柔らかいのはいつも祐二くんが触っていたハコの肉体。 「麗奈?」 ーでも今、ハコの心はわたしが借りて、祐二くんに話しかけているのよ。 昼間のショックが葉子に麗奈を演じさせているのか。それとも本当に麗奈なのか。おれは今の自分の心臓の鼓動が、目の前の女性に伝わらなければよいなと思った。 ー明くんは最後まで信じなかった。わたしが麗奈ってことを受け入れなかった。 あーくんは何を見たんだ、いったい。 ーだから教えてあげたのよ。ハコだったらこんな馬鹿なことはことはしないでしょって。 「あーくんに何をしたんだ」 ー祐二くん、わたしは誰でしょう。 「ハコ、あーくんと何を話したんだ」 一瞬、ノイズだらけのラジオのように音声が途切れた。 ーどうして、ふたりとも、わたしを信じないの。どうして会いに来てくれないの! 葉子は寝息を立てている。 おれは赤く指の形が残っている右手首を見ながら、数分前に聞こえてきた声に考えを巡らせていた。 ーここで本当に何が起こったのだろう。あーくんは何を知っているのだろう。麗奈は大丈夫なのか。ハコは元気に目覚めてくれるだろうか。 葉子が少し寝返りをうち、こちらに顔を向けてきた。葉子は眠ったまま微笑んでいる。 おれはそんな葉子のそばにいて、葉子に何よりも微笑んでいて欲しい、それだけははっきり言えると、葉子が目覚めたら、世界中の誰にでもそう言えるとこの子に約束しようと、そう思った。 (続く) #
by hello_ken1
| 2007-05-27 10:29
| プロミス
|