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そのひとの男の子美味しかった二杯目の珈琲は残りわずかになり、冷めはじめていた。 そのひとは会話の場所をテーブルからソファーに移し、でもぼくはテーブルについたまま、そのままでそのひとの話を聞いていた。 —かちゃん。 リビングの外で物音がした。 「あれ?何か音がしませんでしたか」 「気のせいよ」 そのひとはゆっくりと微笑む。 「どろぼうでもきみがいるから大丈夫でしょ。家に男の子がいるって心強いわ」 —男性って言わず男の子ですか。 ぼくは苦笑いをする。 そのひとはソファーに体を預け、グラスを口にする。そんなに飲んでいるとは思えないけど、そのひとは少しまどろみはじめているよう。 「娘は今夜、外出みたいだし」 ぽつり。 「わたしが言うのもなんだけど、美人だよ」 娘の話になるとまどろみから戻ってくる。 「今度紹介してあげようか」 懐かしそうにほほえむ優しい表情のそのひとが言葉を続ける。これが娘を愛する母親の顔なんだろうな、ぼくはふと田舎のお袋を思いだした。 「あのこ、あぁ娘のことね」 —えぇ今、ライブハウスでぼくを待っていますよ。 「あのこの上にはね、男の子がいたんだよ」 —え。 「今だときみくらいの年頃かな」 ゆっくりと天井の明かりに視線を移すそのひと。少しの沈黙、そして目がしらにそっと人差し指をあてる。 「珈琲冷めちゃったね。新しいの、入れるよ」 そのひとはソファーから起き上がると、氷の溶けきったジンのグラスをぼくの前に置いた。 「だから気持ちはとってもうれしいんだけどさ、きみはわたしにとって男の子なんだよね。大好きな男の子」 ぼくの中でそのひとの表情とお袋のそれが重なった。
by hello_ken1
| 2006-02-25 11:57
| そのひと
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