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海の明かり #7「それが、丘の上から見下ろした海だったの、穏やかな海が」 彼女はグラス越しに自分を見つめる祐二に尋ねてみた。 「いや。丘の上から見下ろした海は恐かったよ」 「恐いって?」 「うん。周期的にぼくを照らす灯台の明かりが消えたらどうしようって。ずっとぼくを照らしていてはくれないと思ったからさ」 祐二はグラスを口に運んだ。今度は、恐怖で乾いた少年の喉を潤すかのように勢いよく飲み干した。 「夜明け前の黒い海は、ぼくらが来るのをてぐすねを引いて待っているみたいだったよ。じっとこっちを見たまま構えて身動き一つしないヘビのようにも感じたな」 「でも、その後、真っ黒い海がまぶしいくらいに明るくなるんでしょ」 「そう、まぶしくなるというよりも、とっても優しくなったんだ。うん、うれしかったよ。明るくなってもっと遠くまで見たくて、もう一度、親父に肩車をせがんだんだ」 「仲良かったのね」 そう言った彼女は祐二の視線が急に遠くを向いているのに気がついた。祐二はそんな彼女から充分に心の距離を置き、ぽつりとつぶやいた。 「親父は泣いていたんだ」 祐二の肩がいつしか震えていた。 「ぼくの目の前に広がる海よりも、もっとずっと彼方を見て涙を流していたよ。知らなかったんだ、ぼくはなぜ親父が彼方を見ていたなんて、これっぽっちも知らなかったんだ」 (続く)
by hello_ken1
| 2006-02-25 13:02
| 海の明かり
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