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プロミス #11「ほんとはね」 麗奈が寂しげな笑みを浮かべている。 あーくんはホーム側、麗奈は7号目の車両のドアのところに立っていた。 息を切らしたおれはどうにか間に合ったようだ。 ーテレビのワンシーンみたいだな。 第三者的な見方をしているおれを感じた。 「ほんとはね」 麗奈は同じ言葉を繰り返しただけのはずだった。 ーずっとふたりと同じクラスになりたかったの。 あーくんの視線がおれに向いた。 ーふたりと友だちになって、一緒に遊んで欲しかったの。 麗奈とおれの視線が合った。 「あきらくん、ゆうじくん、また会えるよね」 麗奈は続きじゃない言葉を続けた。あーくんは小さく「うん」と頷くだけだった。 ホームのベルが鳴り、新幹線のドアが独特の音をたてて閉まった。その瞬間、麗奈はもう手の届かない存在に見えた。 「来てくれて、ありがとう」 麗奈の唇がそう動いている。きっとそう動いている。本当にテレビドラマみたいだ。 でもあーくんもおれもそんなドラマみたいに、麗奈の姿を追ってホーム伝いに新幹線を追うことはしなかった。 きっと麗奈は新幹線が完全にホームから離れ終わるころには、両親の待つ座席に戻って新しい街のことを話しはじめることだろう。 あーくんとおれは新幹線のホームにあるベンチに腰掛けて、ぼんやりと次の新幹線の動きを見ていた。 「お父さんの転勤なんだってね」 あーくんが口をひらいた。 「ほんとにそうなのかな」 あーくんは言葉を続けた。 「ゆうちゃんはちょっと前から知ってたんだよね」 でも微笑んでいる。あーくんはおれを責めてはいない。 「ぼくら、ちゃんと笑顔で見送れたかな」 お姉さんが大きな声で言った言葉はとても大事なことだったんだと、あーくんもおれも感じていた。 「ゆうちゃん、聞こえたんでしょ、麗奈の声」 あーくんの眼差しは少し心配そうだけど、口元はいつものようにいたずらっぽく微笑んでいた。 「寂しい声じゃなかったよね。悲しい声じゃなかったよね、ね、そうだよね、ゆうちゃん」 駅前の横断歩道でまた信号待ちにひっかかったおれは、新幹線の駅の先をじっと見ているあーくんに話しかけた。 「麗奈はね、もっと早くぼくたちと知り合って、遊びたかったって。そう心の中で言ってたよ」 あーくんはおれの言葉に振り返ることもなく、「そうだよね」とつぶやいた。 信号待ちから開放されて、ふたりで車道に踏み出すと、あーくんが少し元気に話しかけてきた。 「麗奈がぼくたちのことを忘れないうちに」 「忘れないうちに」 「うん、忘れないうちに、遊びに行ってやろうぜ」 きっとそれができたとき、神社の境内での麗奈とおれの約束も一緒に果たせるんだろうな、とおれは思った。 (続く)
by hello_ken1
| 2006-10-21 22:04
| プロミス
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