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プロミス #12葉子が隣で寝息をたてている。 「ねぇ、ハコ、起きないと一限遅刻しちゃうよ」 葉子は口元に笑みを浮かべる。 「今、ハコって言ったでしょ」 「いぃや」 「ようこって呼んでよね」 おれはベッドの中からトランクスを見つけようと、右足をもぞもぞと動かす。 「だって本名、ハコじゃん」 「何回言えば分かるの、祐二は。その本名がいやだからようこって呼んでって言ってるんじゃん」 「だから、遅刻するよ。午前中の講義は単位とりづらいんだろ」 「高校一年の祐二に心配されたくはないなぁ」 そう言うとパジャマも下着もつけていない葉子は、おれの上に乗っかってきた。 「二限めからにするから、も一回しよ、ね」 結局、葉子は午前中の講義をすべてバスして、午後の講義までさぼらないようにと大学の学食に向った。 「ぎりぎりまで祐二といると、一日このまま何回もしそうだから」 上京してきて一人暮らしをしている葉子のこの部屋で、おれは学生服を身にまとう。昨日から試験勉強であーくんの家に泊まり込んで勉強をしているはずのおれ。毎回あーくんは快くアリバイ作りに加勢してくれる。これだから幼なじみの悪友は心強い。 ーこのまま早退で家に帰るけど、何かあるかな おれはあーくんに携帯メールを送ってみた。あーくんは学校に行っているはずなのに、返信がやたらと速い。 ーなんにも ーへんしんはやいじゃん ー体育、さぼり、屋上。ハコは ーだいがく行った そう言えば、あーくんも葉子のことをハコと呼ぶ。あーくんもおれも、葉子はやっぱりようこじゃなくて本名のハコの方が似合っているし、かわいいと思っている。 葉子のマンションのエントランスから通りを見ると、秋の陽射しがおれの自転車を包んでいた。 ーここは駐車禁止です。 ハコの字だ。自転車のカゴに封筒が入っていた。 ー次はいつ泊まりに来れるのかな。 大学一年生のハコが高校一年のおれを誘ってる。 ー約束はいらないけど、また来てね。 ハコははじめての夜に、約束でおれをしばることはしたくないと言った。だからハコとおれは何の約束もしない。そんな関係でふたりして、夏そして秋を迎えようとしている。 おれは葉子からの手紙をポケットに入れると、自転車のキーロックの番号をまわした。0426。四桁の数字、葉子とおれの出会いの数字。そして葉子の誕生日の数字。 ー妙なところで縁があるんだよな。 さっきまでの吐息を漏らす葉子の口元を思い出しながら、おれは自転車を歩道のガードレールから引き離した。 「ゆうちゃん、まだハコんち?」 そのとき、あーくんがはちきれんばかりの電話をかけてきた。 「ちょうど出たとこ」 「ちょっといつものとこに寄り道してよ」 「いいけど、どしたの」 「やっとわかったんだよ」 あーくんが興奮している。 「えっ」 「そう」 「ほんとに」 「うん」 おれは自転車の向きを変えると、力の限りペダルを踏み込んだ。 (続く)
by hello_ken1
| 2006-10-30 00:11
| プロミス
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