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今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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プロミス #14


, originally uploaded by elizz.

 ドアを開けると、あーくんがお店のカウンターの中にいた。店長の姿は見当たらない。
 おれがカウンター越しにあーくんの前に立つと、画面に没頭していたあーくんが顔を上げた。
「見つけたよ」
 あーくんはにっこりと微笑んで、視線をディスプレーに向ける。
 お世辞にも明るいとは言いがたいこの喫茶店には、おれたちが高校を卒業するころには一般的になっているInternet Cafeの走りとなるべくネットにつながるパソコンが一台、カウンターの中に置いてあった。
「冗談だろ」
「ほんとさ」
 目が活き活きと輝いているあーくん、そんなあーくんが視線を向けるディスプレーを見てみようと、おれもカウンターの中に足を入れた。
「友だちの紹介がないと会員になれないがサイトあってさ」
 あーくんはディスプレーを指さした。

「ねぇ、ようこ、高校生の彼とはどこまでいってるの」
 午後の講義までの間、ランチをとりながらひとり時間をつぶしていた葉子に、同級生が話しかけてきた。
ーうざいなぁ。
 葉子はわざときょとんとした表情で、同級生に振りかえる。
「うわさなんだから。今日も午前中デートだったんでしょ」
ーほっといてほしいのよねぇ。
「ねぇねぇ、高校生だと、ようこが何でもリードするわけ」
ー同級生ってだけじゃ、親友にはなりえないよ。
「高校生は平日の午前中なんて学校でしょ。だからそんな時間にデートは無理。それに」
 葉子は、それに続く言葉を口にするのをためらった。それに高校生は同い年の範囲でしょ、なんてこの同級生に言ってみたところで、何になるんだろう。
「それになぁに、ようこ」
 葉子はひと呼吸おいた。
「清らかなお付き合いなんだから、リードってことはないんじゃない」
「ほんとにぃ。じゃあ、みんな言いたい放題うわさしてるってことぉ」
 つまらなそうな表情の同級生と一緒に、葉子は午後の講義へ向った。
 退屈な講義、うわさ話ばかりの同級生、そんな学生生活をふきとばしてくれるのは祐二。歩きながら葉子は、祐二のことを考えるだけで、鼓動が早くなるのを感じた。
ーメール来ないかなぁ。

「やっと紹介してくれるひとを見つけて、サイト中ずっと探してたんだけど」
 あーくんが指さすディスプレーから、忘れ始めていた笑顔が思い起こされた。
 それでもおれはあーくんに確認をとらずにはいられなかった。
「名前ちがうじゃん」
「ニックネームでもインターネットネームでもなんでもいいんだよ」
「出身地なんかもおれ、知らないし」
「おれも知らないよ」
 と、あーくん。
「でもさ、確かに」
「でしょ」
 あーくんがこのサイトの中で探し当てたこの子の自己紹介の欄には、おれとあーくんにしか分からないことが書かれていた。
ー小学校のときにやり残したことがあります。かけっこのコーナーワークをうまくなりたかった。
ー新幹線のホームでお別れするのはきらいです。だってもう誰も会いに来てくれなくなるから。
ーもっともっと自由にかけまわりたかった。きみたちに友だちになって欲しいのに臆病でした。
ー好きな人には好きと言いたかった。
ーこれからはそうしよう思います。そんな高校1年生のわたしです。
 この子はこのサイトに登録したときから、おれたちに「早く探し当ててよ」と信号を出し続けている、おれとあーくんにとって疑う余地はなかった。
「結局さ」
「会いに行ってないよな」
 その女の子に約束をしたわけじゃない。どうしてもそれを約束と言うんだったら、それはおれとあーくんの間の約束。
 おれとあーくんはパソコンのディスクの回転音に包まれながら、ふたりして麗奈のプロフィールをじっと見つめていた。

(続く)
by hello_ken1 | 2006-11-11 19:42 | プロミス
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