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プロミス #18「こんにちはぁ」 「あら、いらっしゃい」 「早かったですか」 「そんなことないんじゃない。祐二くん、おねえさん、いらしたわよ」 玄関先でのおねえさんと母親の会話は聞こえている。ふたりともぬけのよい、明るい声で話している。 「ねぇ、祐二くんの彼女のこと、何か知ってる」 「いいえ」 「そおねぇ、あなたになら何か話してるかと、ふと思ったんだけど」 「心配なんですか」 「いいえ、そんなんじゃなくて、楽しみなんですよ。幼なじみの明くんとばっかり遊んでるから、お父さんから祐二くんに彼女がいるんじゃないかと尋ねられた時、何かねうれしくて」 ばつの悪いタイミングだなぁと思いつつも、これ以上、詮索されるのもよくないと、マフラーを首に巻いてとにかく玄関に顔を出した。 「お待ちかねよ」 「じゃぁ、祐二くんをお借りしますね」 「こちらこそよろしくお願いしますね」 母親は出がけにおれの手を握ると、多少の小遣いを渡してくれた。 「でも、なんでおれが一緒に行くわけぇ」 高校生になって、小学生の時みたいにおねえさんをずっと年上だとは思わなくなってきたのが、言葉の節々に現れる。きっと葉子と付き合うようになって、そして、もしかしておねえさんもおれの恋愛対象の年齢幅にまだいるのかもしれない。でも言った後に、少しだけおねえさんの反応を確かめるおれがいる。 「祐二くん、いつの間にか、わたしより背が高くなっているんだね」 おねえさんとほぼ同じ視線だと思っていたけど、よく見るとおねえさんはハイヒールを履いている。もっとよく見るとさすがに今日はデートなだけあって、ピアスも指輪も品よく、でも十分艶っぽく感じられる。そんなおねえさんが腕を組んでくる。 ーこんなところをハコに見つかったら、あとで説明が大変なんだけどなぁ。 そう思いつつも、まったく悪い感じがしない。 待ち合わせのカフェまでの歩道で、おねえさんは急に立ち止まった。 「祐二くんのコートのポケット、ごつごつしてる」 ーえっ。 「何、入ってるの」 「あぁ、親父からもらった古いカメラ」 ーそんな話題ありなのかな。 「わたしの顔、こわばってない」 話題が変わる、おれは首を横に振る。 「今日のおねえさん、とてもきれいだよ」 おねえさんは一瞬、きょとんとし、次の瞬間には笑い出していた。 「もうそんな台詞を言えるようになったんだね、祐二くん」 「からかうなよ。帰っちゃうよ」 ほぐれた笑顔のおねえさんは、まだ笑いが収まらないままに言葉を続けた。 「ねぇ、街をバックに1枚、撮って」 ー雨上がりの街は、いろんな色がきれいに見えるね。好きだな、雨上がり。 少し悩んだけど、おれはおねえさんの声に後押しされて、写真を撮ることにした。ひとつ間違うと泣き顔にもとれそうな笑顔、あやうい笑顔がファインダー越しに見えた。 ーありがとう。 また声が聞こえた。やさしい響きが心に伝わってきた。 おねえさんはおれと腕を組み直し、一緒に彼氏の待つカフェに向った。 カフェでは、おねえさんの肩越しに彼氏の顔が見える席にすわり、珈琲を頼んだ。 一杯の珈琲では足りず、お代わりとショコラケーキも追加で頼んだりした。ショコラケーキ、葉子が好きなケーキだ。 ケーキを口に頬張りながら、おねえさんからの頼まれ事を思い出してみる。 「彼から話があるようなの」 「どんな話であっても、彼がうそをついていなければ、それでいいと思ってる」 「祐二くん、勘がいいでしょう。彼の表情、見ててくれないかな。正直に話しているかどうか、見ててくれないかな」 もう二十代後半にさしかかろうとしているおねえさんが、高校生のおれにお願いに来た。 「大事なことだよ。おれなんかに頼んでいいの」 「祐二くんを小さい頃から知ってるけど、不思議なのよね、祐二くんはひとの心が読めるみたいで」 結局、おれはお店の人に頼んでおねえさんにメモを残し、途中でひとりカフェを出た。 ー街の色に気づいたおねえさんは、もう大丈夫。きちんと彼氏のことが見えてるはずだよ。いつでもまた写真撮ったげます。 雨上がりの街は、ほんとうにきれいだった。人通りの多い街中なのに深呼吸したくなるほど。 おれは葉子に電話をかけた。 「ねぇ、撮影会しない。モデルはハコ。バックは街。どう」 寝ぼけた声の葉子は、それでも一生懸命反応しようとしている。 「マンション近くの公園で待ってるから。出ておいでよ」 親父からもらったこのカメラの最初の1枚は葉子ではなく、おねえさんになってしまったけれど、 ー残りのフィルムは全部ハコで埋め尽くそう。 そう心に決めて、おれは待ち合わせの公園へ向った。 (続く)
by hello_ken1
| 2006-12-10 14:22
| プロミス
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