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プロミス #36いつもの喫茶店で、おれはマスターと話していた。 「何だかうまく歯車が噛み合わないなぁ」 「噛み合っているのかも、な」 葉子と別れて、何気に立ち寄ったこの店。 入口のドアを開けた時、立ち寄れるところがあるのっていいなぁ、と感じた。 マスターは 「いらっしゃい。久しぶりだね」 それだけ口にして、夜の営業に向けて準備にとりかかろうとしていた。 「今日は天気よかったから、喉が渇いてるだろう」 注文を聞くかわりに、 「悪いけど、冷蔵庫にあるもの何でも飲んでいいから、自分でやってくれるか」 なぜかマスターの笑顔がうれしかった。 「ビールでもいいわけ?」 「いいよ、祐二が飲みたい心境ならな。無理しなきゃ、いいんだよ」 ーそうだよね、無理しなきゃ、いいんだよね。 おれは冷蔵庫からジンジャエールをとりだすと、タッパに入っているスライスされた檸檬を1枚、グラスに浮かべてみた。 「いい選択だね」 笑いながらマスターが近寄ってきて、キャップに一杯のジンを注いだ。 ーえっ。 「いいんだよ。このくらいは入れたか、入れてないか、わからないくらいなんだから。美味しいぞ」 マスターはアイスピックと包丁で器用にアイスボールを作り始めた。 静かな店内にマスターの氷を削る音だけが聞こえていた。 おれは二、三口ジンジャエールで喉を潤した。確かに美味い。 そして、ケイタイの着信履歴をもう一度、確かめてみた。あーくんから3回かかってきている。葉子の部屋についたとき、葉子と散歩にでたとき、葉子と握っていた手を離したとき、たぶんそのくらいの時間。そして、その3回目の着信であーくんは留守電を残していた。 ーだめだよ、別れちゃ。 早足で歩きながら電話をかけているのがわかる。ざっざっざっ、と歩いている音があーくんの声と一緒に留守電に入っている。 「噛み合うってなんだろうね、祐二」 マスターは手を休めて、ビールを飲みはじめた。 おれもビールにすればよかったと思うくらい、美味しそうにマスターはビールを飲む。 「祐二は噛み合わないって、よくないことだと思ってんだろ」 「噛み合わない時も、噛み合わないことを気にする必要はないんだよ」 「それはスピードを落とせってことだけだから」 「スピードを落とすと、実は噛み合っていたってわかるから。不思議とな」 独り言のようにマスターは言葉を重ねた。 ケイタイが鳴った。あーくんからの4回目の電話だ。 「自分のスピードで、目の前のものをひとつずつ片づけて行く。あせんなくてもいいんだよ」 マスターは視線でケイタイに出るように、おれに言った。 かかってきたケイタイから、息遣いの荒いあーくんの声が聞こえてきた。 「今、どこ?ゆうちゃん」 (続く)
by hello_ken1
| 2007-04-15 17:54
| プロミス
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