今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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プロミス #43


The Waiting, originally uploaded by nailbender.

 明が夢から目覚めると、朝日の差し込む窓側に由香が立っていた。
「おはよう、明くん。よく眠れたかな」
「ああ、おねえさんか。おはようございます。痛み止めが効いたのかな、夢まで見ちゃいましたよ」
 寝ぼけ眼の明は、朝日の逆光で輪郭がぼんやりと映る由香を、不思議な感じで見ていた。
 由香は包まれた光の中から動こうとはしなかった。

「今、何時ですか」
 明のその問いかけに、由香は答える気がないようにうっすらと微笑んでいた。
「まだ早い時間なんですよね」
 由香はだまって頷いた。
「何かありましたか」
 由香は窓枠に背もたれると、静かに明に話しかけた。

「どうして昨日は信じてくれなかったのかな」
 いつもの由香の声と違う、その声色に明は背中に冷たいものを感じた。
「わたしにあそこまでさせなきゃ、信じてくれないのかな」
「、、、麗奈」
「昨日は最後まで信じなかったのに、今日は素直に信じるんだ」
「まだ信じてないよ」
「でも、今、わたしの名前を口にした」
 明は由香が手に何か持っていないかを、視線だけで確認しようとした。
「明くんも祐二くんも信じてくれなかったから、また夕べ、ママを傷つけちゃったじゃないの」
 由香の両手は腰に隠れていた。単に後ろに回しているだけなのか、それとも昨日の葉子みたいに危ないものを持っているのか、明はゆっくりと視線を由香の顔に戻した。
「窓ガラス割っちゃったし、これでまた診療所に戻されるわ」
「おねえさん、麗奈のこと何を知っているんですか」
「だから、わたしが麗奈だって言ってるでしょ」
 上半身を前のめりに、きつい口調で明に吐き捨てた。
「会いに来てくれるとずっと思っていたのに、ずっとずっと待っていたのに、明くんも祐二くんも誰も会いに来てくれない。電話も手紙も全然ない」
「夢を見たんだ」
 隠れていた由香の手もとに朝日の反射で光るものが見えた。
「麗奈とゆっくりと話をしている夢を。何を話しているってわけじゃないんだけどさ、そこにはゆうちゃんもいて、3人が笑顔で輪になっていて」
「そんなわけないじゃない。ずっと待ってたんだもん、ひとりだったんだから」
「そうだよね。でも夢の中じゃ、小学校の時遠くからおれが見ていた麗奈の笑顔がそのままで、屈託もなく笑っているんだ」
「ずっと待ってても来てくれないから、ようやく外出許可がでたのに、ママをガラスの破片で傷つけちゃったから、また診療所に連れ戻されるわ」
「ママは偶然だってわかってくれてるよ」
 明の言葉を遮るように、絞り出す声が続いた。
「ちゃんとわたしに言ってよ。ちゃんと約束してよ、ぜったい会いに来るって、わたしのこと忘れてないって、ずっと忘れないって。約束してよ」

 朝日の差し込む角度が少し変わったのだろう、由香の表情がわかるようになった。そして、由香が右手首につけている銀のブレスレットがその光りを反射していた。
 明は、きょろきょろして落ち着かない由香にそっと話しかけた。
「麗奈の夢を見たよ。早く会いに来いって、麗奈が夢の中で言いに来たんだ」

(続く)
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by hello_ken1 | 2007-06-03 10:16 | プロミス
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