ー何してるの
ー読書
ー何読んでるの
ー伊集院
ー泣いてるんでしょ
チャットみたいなメールのやりとり。これじゃ読書は進まない。
ーそろそろ戻ってくれば
ーもう少しだけこっちにいるの
ーそう
文庫本をテーブルに置く。
ーあのさ
ここ数日の読書も少し飽きてきた。
ー戻っておいでよ
チャットが止まる。
少し時間があいた後、ケータイがきみからの電話を知らせる。
「もっしもっし、もう一回言って」
「何を」
分っているけど、口にするのは何となくはずかしい。
ーもう戻っておいでよ
頭の中で言葉を繰り返す。
ケータイの向こうできみが目を閉じて耳をたてているのがわかる。