ー早く来ないと寒くなっちゃうよ。
きみの言葉を思いだし、空を見上げる。
午前中の抜けるような青空は、午後になって少しずつ曇天に変わりつつある。
ー早く早く。
信号待ち、風も少し頬に冷たい。
いつものカフェで先に珈琲を飲んでいるらしいきみに「そんなに早くは着かないよ」と返信のメールを送る。
ーもっしもっし、いいこと教えてあげる。
青信号とともにぼくの口元がゆるむ。
ー歌いながら歩くとね、目的地に早く着くんだって。
ぼくを待ちながら読んでいた本にちょうどそんな一節がでてきたらしい。
ぼくは昨夜きみから送られてきた曲を口ずさむことにした。