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今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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Midnight Zoo #3

 何も身に付けないまま、航の体温を感じながら、朝日に起こされるのが好きだ。数時間前までの余韻を身体の芯に覚えつつ、桜子は20センチ先の航の横顔を見ていた。
 そっと航の臀部に触ってみる。
ーうん。航もわたしと同じ、さっきまでのまま、横にいる。
 妙な安心感を確認し、航の身体に自分の足をからめてみる。
ー朝日に包まれているふたり。
 少女趣味だな、と自分でも思いつつ航の胸に顔を乗せる。

 次に気がつくと珈琲の香りがしていた。
 身体を反転させ、顔を窓向きからリビング向きにすると、マグカップを手元にノートパソコンの画面に見入っている航がいた。マグカップからは白い湯気が上がっている。まだ部屋の空気は少し冷たいようだ。
「珈琲、飲むか、丁度炒れ立てだよ」
「うーん、まだお部屋温まってなさそう」
「そんなことないだろ」
 航はシーツから顔だけ出している桜子の横に腰かけ、桜子の唇にふれる。そしてシーツを少しさげ胸にキスをする。
ーあ
 声にならない声が桜子の中で響く。
ーいつもの朝だ。
 桜子は航とのこの儀式で夜が終ったことを知らされ、ベッドから起こされる羽目になる。

「あーあ、朝になっちゃった」
 航は笑っている。笑って、炒れたてだと言う珈琲を桜子のマグカップに注ぐ。
「今日は何時までここにいるの」
 ちょっとした航の言葉は心もとない。
ーそうじゃないでしょ。
 その都度、桜子は心の中の言葉を押し殺す。
「航次第」
「じゃあ、何時までここにいれるの」
ーそれも航次第。
「何か用事がおあり」
 ベッドから降り、航にお尻を向けて桜子は下着を付け始める。航は見ていない振りで珈琲をすすっているはず。

「じゃあ、外でブランチでもどう」
 と誘ってきた航に首を横に振り、今、桜子は新しい珈琲を炒れている。
 ブランチをしてもその後別々の行動をとるのだったら、あわててブランチのために身だしなみを整えなくてもいいなと思った。
ーブランチのあとも日が沈むまで一緒にいれて、日が沈んだら昼間とは違う目つきで見つめ合う、それだったらいいんだけれど。
「航が帰ってくる頃にはもういなくなってるよ。適当に時間つぶして帰る」
 航は「夜まで待っていなよ」とは言わない。今日に限ったことではない、いつもそうだ。そしてそれが航なんだから。

 出かけ際に航が言っていたとおり、冷蔵庫を開けると確かに美味しそうなロールケーキが入っていた。
ー珈琲もある。ケーキもある。
 ひとり航の部屋に残った桜子は、夜明け前の航を思い出しながらほくそ笑んだ。

(続く)
by hello_ken1 | 2008-12-14 16:04 | Midnight Zoo
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