今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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2007年 05月 13日 ( 2 )

きみのもしもし #13

 朝、シャワーを浴びて、バスタオルを頭に乗せて、きみにメールする。
ーはろはろ。今日は母の日だよ。
 ラジオをつけて、パンを焼く。珈琲豆もカンから取り出す。
 ラジオからは世界中の母に捧げる音楽が届けられる。
ーもしもし。これからママに電話するんだ。BGMはあなたのマックに送ったげる。
 マックを立ち上げ、きみからのメールを受信する。
 受け取った音楽ファイルをクリックすると、さっきラジオで流れていたあの曲がかかった。
ーはろはろ。もしかして、ラジオ聴いてるの?
 きっとそうなんだろうな、と勝手に思って、ぼくは焼き上がったパンを頬ばった。
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by hello_ken1 | 2007-05-13 19:56 | きみのもしもし

プロミス #40


42-15299044, originally uploaded by ccpengpeng.

 麗奈は受話器に意識を集中させて、由香の息遣いまでも聞き取ろうとしていた。

「ほんと何もない?」
「何もないわよ」
 精一杯、淡々と答えられたと由香は思った。

「診療所の廊下でね、真っ赤になって倒れる男の子が見えたの。はじめ祐二くんかと思ったんだけど、明くんなの」
「小学校のときの記憶じゃないかな」
「うぅん、そんなことない。高校生くらいの男の子だったもの。高校生になったふたりにまだ会えていないから、確信はないんだけど」
 少し間があった。麗奈の心配そうなため息が聞こえてくるようだった。

「わたしずっと診療所だから、そんなに友だち多くないし。うん、いないって言ったほうがいいかな。だから、見えた男の子は祐二くんか明くんのはずなの」
ー安心させなくちゃ。落ち着かせなくっちゃ。
 由香は言葉を選んでいた。
ーうん。
「そう。きっとふたりに会いたい気持ちと、会った時の不安が入り混じって、そんな光景がレイを包んだんじゃないのかな」

 麗奈は受話器を強く耳に当てていた。
ーおねえさんはいつも優しくわたしをレイって呼んでくれる。変わらない優しい由香ねえさん。
 受話器を持つ手を少し緩めた。

「わたしに聞こえてくる情報って、ママとパパ、それと診療所のスタッフ」
「そうだね」
「診療所に一緒に入っているみんな」
「うん」
 由香は少し胸が締めつけられる思いがしていた。
「そして、由香ねえさんからなの」
 だまって由香は頷いた。

「由香ねえさんがほんとうのことを言ってくれないと、わたし、この世界とつながっていけないの。由香ねえさんがわたしの世界の窓口なの。だからお願い」
 麗奈の声が震えはじめて、由香はそんな麗奈を力の限り抱きしめてあげたい感情に駆られた。
「わかっているわよ」
「由香ねえさん、だったら」
「大丈夫よ。何もないと思うわ」
 こう言うしかないと思った。

「でも、念のため、祐二くんに明日にでも確認しとく。ね。それでいいかな」
 病院で彼氏が明くんの母親にどう説明したか、に合わせる必要がある、せめてそのくらいのつじつまは合わせておかないと。
「ごめんなさい。面倒ばかりかけてるね」
 麗奈が鼻をすする音が聞こえた。
「面倒じゃないよ。そんなことないよ。それより早く遊びにいらっしゃい。実物のふたりに会えるわよ」
 うん、と麗奈の消え入るような声が聞こえた。
「でも、行けるかな」
「自宅に戻れたんだから、来れるわよ。きっと。待ってるわ。約束ね」

 麗奈が遊びに来るのは、明が退院してからの方がいいと思いながら、由香は受話器を置いた。

(続く)
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by hello_ken1 | 2007-05-13 19:33 | プロミス