今は「Midnight Zoo」と「きみのもしもし」を掲載中
by hello_ken1
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2007年 05月 20日 ( 1 )

プロミス #41


at teatime, originally uploaded by yugoQ.

ー鍵は開けておくね。そんなに遅くならないよね。もう少し横になってるから。
ー体調悪いの?
ー大丈夫だと思うけど、なんとなく体全体がだるいのよね。
ー食べたいものあるかな。
ーモンブラン。
ーどこのがいい?
ーどこのでもいいよ。ちょっとでも早く会いたいから。
ーわかった。でも、鍵はかけときなよ、ぶっそうだから。
ー、、、
ーどうした?
ーおかしいよ、変だよ、やっぱり。
ー、、、
ー優しすぎる。もともと祐二は優しいけど、今のわたしたちの関係だと、これじゃ優しすぎて、友だちになれないよ。
ーそうかな。
ーそうだよ、祐二。
ーモンブラン、おれが食べたいから、じゃだめかな。
ーだめ。
ーそっかぁ。
ーキスして。
ー、、、
ーあっ、困ってる。
ーキスしたら、友だちになれないよ。
ーだって、戻りたいんだもん。彼氏と彼女に戻りたいんだもん。
ー、、、
ー、、、
ーとにかく、横になってろよ。モンブラン、買ってくから。
ーすぐ来てくれるの?
ー自転車飛ばして行くから。
ーモンブラン、つぶさないでよね。
 葉子の少しだけほころんだ口元が見えた気がした。

 きっと少しはつぶれてるよな、そんなことを思いながら、おれは葉子のマンションを見上げる歩道に自転車を止めた。陽は長くなり、オレンジ色の陽射しがガードレールにチェーンをかけた自転車を不思議な黄色に染めあげる。
 モンブランが入った紙箱をこれ以上揺らさないように左手でしっかりと持つと、エントランスのインターフォンで葉子の部屋番号を押した。
 返事がない。
 もう一度、番号を確かめながら、数字をゆっくりと押す。いつも押している番号だから、間違いようはないはずだ。そのことが余計におれを不安にさせる。
 でも、やはり返事がない。
 ポケットからケイタイを取り出し、葉子の番号にかける。呼び出し音がとても長く感じられる。いつまで呼び出しているんだろう。この番号はもはやこの世に存在せず、葉子の存在もなく、ただおれは意味もなく番号を押し続けている、そんな不安に包まれていった。

「もしもし」
 留守電サービスに切り替わった直後だった、寝ぼけた葉子の声がケイタイから聞こえた。どんな声であろうと、葉子の声である限り、それはおれを十二分に安心させる。
「着いたよ、約束のモンブラン」
「ん」
 葉子がベッドから起きあがる音だろう、シーツの擦れ合う音が妙に優しくおれの耳に届いた。

(続く)
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by hello_ken1 | 2007-05-20 18:22 | プロミス